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体験をデザインする

毎日行く店を、旅の思い出に。

地図、バッジ、手軽な記録。スターバックスのストアパスポートを、行動を少し変える体験デザインとして分解します。

2026-07-24 · 約9分

私はスターバックスのストアパスポートが大好きです。気付けば日本全国すべてのスターバックスを訪れ、ストアパスポートも完成させていました。けれど、ここで語りたいのは私の達成談ではありません。なぜこの体験は、人の行動をこれほど自然に変えるのか。そのデザインを分解してみます。

少しだけ地図を広げる最初は、旅行のついでに近くの店舗へ寄るくらい。それだけで地図が少し広がります。

成果を数字ではなく、地図で見せる

訪問店舗数という数字も進捗を示します。しかし、地図が埋まっていく体験はもっと直感的です。どこへ行ったのか、どこがまだ残っているのか、次にどこへ行けそうか。それが一目で分かります。

地図は過去の成果を表示するだけではありません。空白がそのまま次の目的地になります。『この県はまだだ』『旅行先の近くに未訪問の店舗がある』と気付くことで、次の行動が自然に生まれます。

地図が次の目的地を作る埋まった場所は記録に、空白は次の小さな目標になります。

大きな目標の途中に、小さな達成感を置く

全国を埋めるような大きな目標だけでは、進んでいる実感を持ちにくくなります。そこで効くのが、店舗や地域に応じて増えていくバッジです。

地図という連続的な進捗と、バッジという区切りのある報酬が重なります。地図を見れば全体の広がりが分かり、バッジを見れば途中の節目を思い出せる。一度の訪問が複数の形で残るため、小さな行動にも手応えがあります。

進捗と節目を重ねる地図は広がりを、バッジは節目を見せます。

遊ぶための操作を増やさない

この体験の優れた点は、スターバックスカードで普段どおり買い物するだけで訪問が記録されることです。専用のスタンプ台を探したり、会計後にQRコードを読み取ったり、毎回アプリを開いて操作したりする必要がありません。

新しい行動を要求せず、既にある行動の結果として遊びが進む。これは継続のために非常に強い設計です。記録するために店へ行くのではなく、店へ行った結果が自然に記録になるからです。

買い物が、そのまま記録になる体験を始めるための儀式がなく、普段の行動の中に遊びが入っています。

日常と旅行を、同じ遊びにする

旅行先で未訪問の店舗へ寄れば、地図が大きく広がります。一方で、仕事帰りや休日の買い物でも少しずつ進みます。旅行だけの遊びでは頻度が低くなり、日常だけの遊びでは景色が変わりにくい。ストアパスポートは、その二つを同じ仕組みでつないでいます。

旅行の予定を立てるときに『近くに店舗があるなら、せっかくだから寄ってみよう』という条件が一つ増えます。大きな目的地を変えるほどではない。でも、乗り換え駅で少し歩いたり、予定になかった道へ入ったりするには十分な理由になります。

『せっかくだから』を作る数分の寄り道が、知らない道や景色に出会うきっかけになります。

完成があるから、旅として記憶に残る

地図を埋め、バッジを集め、少しずつ進んだ先には完成があります。終わりがあるからこそ、途中の積み重ねが一つの旅としてまとまり、完成した瞬間には強い達成感が生まれます。

同時に、終わってしまう寂しさもあります。私はその寂しさから、同じように日常と旅行をつなぎながら、もっと長く続けられる体験を考え始めました。

うれしい。でも、終わってしまった完成の達成感と、遊びが終わる寂しさは同時にやってきます。

この体験を、どう具体化するか

作りたいのは、特定の機能の複製ではありません。日常の行動が自然に記録され、地図で進捗が見え、小さな節目が積み重なり、次の寄り道が生まれる体験です。

その具体化の一つとして、Store Passportsを作っています。訪れた店を写真で確かめ、チェーンごとの地図へ反映し、節目をフクロウのバッジとして残します。公式サービスのように決済情報から自動記録することはできないため、写真認証と位置情報を組み合わせ、なるべく短い操作で訪問を記録できるようにしています。

店を訪れる
写真を撮る
候補から訪問先を確かめる
地図とバッジが増える
次の寄り道が見つかる

写真認証、店舗候補の生成、地図、バッジ、パスキー認証、訪問データの保存。これらは別々の機能ではなく、同じ体験を具体化するための層です。技術を選ぶときも、最終的には『訪問の余韻を壊さず、記録を続けられるか』という問いに戻ります。

体験を、別の方法で続けるStore Passportsは、日常に寄り道を作る体験を具体化する一つの提案です。